小笠原諸島出身の店主が故郷の魅力を詰め込んだお店 

小笠原と立川を結びたい

奈美さんはチャレンジショップ閉店後、地元農家のとれたて野菜のーかる(現のーかるバザール)に従事し、立川市の姉妹都市長野県大町市のアンテナショップ「信濃大町アルプスプラザ ※以下、大町プラザ」の店長に就任しました。手作り惣菜の販売などもされ、このアンテナショップでの5年間は非常に学びが多かったそう。

様々な経験のもと、小笠原と大町、立川を結ぶのは自分しかいない！との想いで今回お店のオープンに漕ぎつけました。最初にチャレンジショップをオープンしたのが立川で、その後、大町プラザの店長に従事することで、地元野菜の魅力、大町の魅力を知ることが出来た、と奈美さん。この経験がのすべてが一本の線で繋がり、「島想食堂」が完成したのです。

こちらのお店では、小笠原の物産品や大町野菜などの購入ほか、ランチタイムはお惣菜を選んで定食として食べることができ、ディナータイムは小笠原の郷土料理や大町のお酒などがいただけます。

小笠原・大町・立川の魅力を一つの場所で。そこから繋がる「良い流れ」

野菜嫌いだった子どもがのーかるの野菜にすると食べられる、といった地元野菜の魅力。お水が美味しいからお米や日本酒が美味しいという大町の魅力。世界遺産になるほどの自然と、そこに住まう人々が生み出す小笠原の魅力。

全ての魅力を知っている店主だからこそ、そこから故郷への恩返しの意味も込めてお店を創り上げることが出来たのだと感じました。

お店を通じて「良い流れ」を作りたい、と奈美さんは続けます。

それは島を知ってもらうこと、そこから島への送客、そして食材の離島発送など・・・

小笠原諸島は東京都でありながらも交通手段は船のみ。限られた船便で物資が届くため、鮮度保持や品目などにはどうしても限度があります。年に一度、1ヶ月程度続く船の定期点検では6日に1便という通常運行からさらに日にちの空く就航のため、島のスーパーでは野菜が不足してしまうそうです。島内でも野菜作りを頑張っている農家さんもいるそうですが、賄いきれない現状があるとのこと。そこでいつか立川や大町野菜を発送し、少しでも島の人の助けになれたら「良い流れ」のひとつになっていけるのではないかと考えているそうです。

結束力の高い島の魅力と背景流通の実現

島では一斉に同じものを作らないと産業が守れない現状があり、しかし新たに後継者を作るにも住む場所が提供できない問題があったり・・・様々な課題がある島の現状の中でも、店主が今年4月に帰島した際に出会いがあったそう。それは様々なクラフトマンの存在でした。

お土産屋さんに行っただけではどんな人が作っているのか分からないけれど、月に1回行われるファーマーズマーケットでは作った人の顔が見られ、誰がどのようにして作っているのかを伝えられること、背景流通の大切さを実感したそう。

野菜はもちろん、全ての品物の作り手の想いをエンドユーザーまで”伝える”ことがとても大切と大町プラザに居た頃学んだそうですが、大町のように行きやすいわけでもなく伝えやすいわけでもないのが島。

だから「島想食堂」では物産品や島野菜のPOPには奈美さんのひと言が添えられています。全ての品物に背景があり、それは店主自らが見て、聞いて、実感したものだから、POPひとつを取っても、島を想うことが伝わってきて温かな気持ちになります。

とにかく小笠原に行こう！

店主の想いは恩返しをしたい、ではなく、何か島の役に立てることはあるかな？であり、「島想い」ではなく「島想う」なのは”ただただ島を想っているだけだから”、と奈美さん。

いずれは店内ワークショップで小笠原・大町・立川の食材背景を伝えながら作り置きを作ったり、作るところから片付けまで一緒にやるご飯会をしてみたり、とにかく島に行ってくれる人を増やしたい！行きたい気持ちを行くに変えることで島の活性化にも繋がるのです、と締めくくりました。

食べる・買う・知る　唯一無二のお店

今回取材をさせていただいて、本当に店主の小笠原に対する想い、そこから伝わる島の魅力を体感しました。お惣菜の味はもちろんのこと、そこに並ぶ小笠原の物産品の数々は、一つ一つ背景に魅力が詰まっていることを実感しました。ぜひ店舗を訪れ、小笠原、大町、立川の魅力を食べて、触れて、見て体感して欲しいです。

”いつか”ではなく、”近い将来”、小笠原に足を運びたい、きっとそう思わせてくれるお店です。