【歴史的に有名な逸話を、運命に翻弄される姉妹の物語として描く】

イギリス国教会ができるきっかけを作り出したヘンリー8世とアン・ブーリンの歴史的に有名な逸話を、王の寵愛を巡って運命に翻弄される姉妹という別の視点から描かれていて面白い。

王が屋敷を訪れて、最初に見初めたのは、父親が王の愛人に差し出そうと考えた姉アンではなく、先に嫁いでいた妹のメアリーだった・・・から始まる物語。

姉妹のドロドロとした愛憎劇となりがちな内容を、父親や伯父の策略によって幸せだったはずの人生の歯車を狂わされてしまった姉妹の哀しいロマンスとして観客の目に見せるジャスティン・チャドウィック監督の手腕に感服。イングランドの美しい田園風景、細部まで見事に再現された豪華な衣装や宮廷も重なって、どんどん物語へと引き込まれます。

陰謀と裏切りが渦巻くイングランド宮廷の中で、幸せを得ようと一生懸命に生き抜いた女性として、ナタリー・ポートマンが、存在感たっぷりにアンを演じるところも目が離せません。魅惑的に輝く目が印象的。どこで・・・と思ったら、スターウォーズエピソード1の女王様だったのですね。そして、同じくハリウッドを代表する若手スター、スカーレット・ヨハンソンが、対照的なメアリーの純真さ美しさを引き立てています。こちらの競演対比も見逃せません。

最終的に、王の愛を略奪して女王の座をも無理やり勝ち取り、勝利したように見えたアンが、断頭台の露と消え、身内に傷つけられながらも周囲の流れに身を任せて逆らうことなく地道に生きたメアリーが、家庭を築いて静かなに幸せに長生きをするといった結末に、しみじみと本当の幸せとはと考えさせられ、物悲しくなります。

最後の場面で無邪気に遊ぶ子どもの一人が、やがてエリザベス1世となると気づき、次は「エリザベス」1998年公開が見たくもなりました。
text by...  nagai

2008/09/18