地元暮らしをちょっぴり楽しくするようなオリジナル情報なら、立川の地域情報サイト「まいぷれ」!
文字サイズ文字を小さくする文字を大きくする

立川の地域情報サイト「まいぷれ」立川市

Cute Movies

マイ・ブルーベリー・ナイツ

監督:

(c)Block 2 PICTURES 2006
2008年3月22日より日比谷スカラ座ほか全国東宝洋画系にて公開
監督:ウォン・カーウァイ
出演:ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマン、レイチェル・ワイズ
(c)Block 2 PICTURES 2006

あえて美しさを否定する演技がニクい。 ジュード・ロウ 背景のゆたかな色彩にも目を奪われる
(c)Block 2 PICTURES 2006

多様な役に挑戦。完璧主義をうかがわせる常に高い完成度に脱帽。 ナタリー・ポートマン
「ファンタスティックな映像が印象的な映画」MYベスト入り必至!

もう、いろいろなところで紹介されますから、TVで放映されているCMも友近さんとなだぎ武さんによるナレーションで注目を浴びていますから、言うことはありません。ただ、一つだけ。

ああ、ウォン・カーウァイ。

香港映画好きからすると複雑です。あのウォン・カーウァイ節が全開なんですから。しかも寸分の狂いもなく、香港で製作しているときの雰囲気そのままに。腹心の撮影監督であったクリストファー・ドイルが今回は撮影を担当していないのにもかかわらず、ロケ地はアメリカで、俳優は英語をしゃべるハリウッドスター達にもかかわらず!!悔しいやら、嬉しいやら、ウォン・カーウァイの強烈な作家性にあきれるやら……言葉になりにくい作品です。

が、ひとまず落ち着いて解説してみましょう。

ストーリーは、女優初挑戦のノラ・ジョーンズ(ゆったりとなめらかな声が印象的な、間接照明が似合うボーカリストですね。)演じるエリザベスが、失恋の痛手を癒すためNYのカフェへ通いつめ、快活でありながらどこか寂しげなカフェオーナーであるところのジェレミー(ジュード・ロウ)と親しくなる。がしかし、ある時ふいにジェレミーに何も告げず旅に出てしまうエリザベス。それは、自分を探す旅。

ってな話です。まあ、なんてことはありません。
日常の場面に持ち込まれる赤・青の大胆な照明、美しく揺らめく光と陰。ウォン・カーウァイな映像に、「カーステレオから音楽を流しっぱなしにしたよう」とも形容される途切れることのないBGM音楽と街のざわめき。開始早々、がんがん、ぐんぐんウォン・カーウァイ世界へ突入します。

そしてまあ、役者陣のなんと豪華なことでしょう。ジュード・ロウにしても、カフェのオーナーという役が普通すぎるほど芸達者な俳優ですし(出演作は多数ながら、芸達者ぶりを観るには『リプリー』『ロード・トゥ・パーディション』そして今春3/8~公開中の『スルース』あたりをオススメします。ちなみに、かっこよさを味わいたいときは、『ホリデイ』でしょう。)、『レオン』のナタリー・ポートマン、『ナイロビの蜂』でアカデミー賞助演女優賞獲得のレイチェル・ワイズ、『グッドナイト&グッドラック』で孤高のニュースキャスターを演じてこれまたアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたデイヴィッド・ストラーザン。このキャストたちを無理矢理にまとめようとしないのが、素晴らしいところですね。それぞれ心に陰のある役どころを嬉々として演じています。カメラはそこにあるだけ。

そうそう、ここらで、そのウォン・カーウァイなる人物について触れなければなりません。先ほどから香港、香港と言っていますが、出身は実は上海。5歳で香港に移住、脚本家としてキャリアをスタート。1994年に発表された監督作『恋する惑星』が、香港映画=アクションという図式を見事に打ち破り、スタイリッシュな映像と音楽で大ヒット。いつ観ても新鮮、ポップでキッチュでみずみずしい、ウォン・カーウァイワールドの真髄です。『欲望の翼』『天使の涙』で都市にたゆたう若者の切なさに肉迫し、『花様年華』『2046』で、愛と時間をテーマに様式美とも言える芸術へ昇華、『ブエノスアイレス』の衝撃も忘れてはなりません。全体的に、「考えるな、感じろ」というブルース・リーの名ゼリフのごとく、ストーリーがおもしろい!というよりは、ミニシアター系なフィーリング型です。それでも、知っておいて損はない。音、視覚、かならず何かしらの発見をもたらしてくれる一本になるはずです。効率第一な毎日だからこそ、ファンタジックな世界に足を踏み入れてみるのも悪くないでしょ?

text by...  こうだ真紀

2008/03/21