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Cute Movies

カフェ・オレ

監督:マシュー・カソヴィッツ

大好きな彼女から、ある日大事な話があると呼び出された。
彼女の部屋に出向くと、自分のほかにもう一人、男がいる。
彼女は言う。妊娠したの。一人でも産むわ。二人とも好きなの。
なぬ~っ!である。

愛の国フランスで、人種も宗教も生活環境も異なる二人の青年が
一人の女の子に恋をした。
ユダヤ人の白人青年とエリート黒人青年。
彼らが恋したのはカフェ・オレ色の肌をした美しい女の子だ。

妊娠という事実で突如現れた新しい命の存在。
その肌が白いか黒いかもまだ分からないが、
大好きな彼女からこれから生まれてくる大切な命。
この存在が彼ら3人の間に奇妙な関係をもたらす。

フランス国民のうち、人種や民族的な意味でもともとフランス人である人は、
全体の4分の1しかいないらしい。
以前、フランスを旅行した時、現地の旅行会社の男性が教えてくれた。
それだけ、多民族・多人種国家だということなのだろう。
実際、旅していても、普通に白人と黒人が入り混じり生活しているように見えたし、
他に中近東出身と思われる人たちもよく見かけた。


もともとは、黒人をルーツにしているのだろうが、
黒人と言うには肌の色が薄めのミルクティーだとかカフェ・オレのような肌色の美しい女子大生ローラ。

裕福なエリート外交官の家系に生まれ、
自らもエリートの道を進む法学生でイスラム教徒の黒人青年はジャマール。

兄は薬物売買で実刑、父は生活保護。
決して裕福とはいえない生活環境で過ごすユダヤ人の白人青年フィリップ。

優等生タイプのジャマールとやんちゃな悪ガキタイプのフィリップは、
まったく異なるタイプの青年だが、
二人とも、肌の白黒や宗教に関係なく友人を持ち、素敵な相手がいれば当然恋に落ちる。
彼らが特別というのではなく、映画を見ている限りでは、
フランスの若者たちはみんなそうだと思われる。
しかし、一方でそんな彼らが喧嘩の際には
「この黒が!」だの「だまれ、ユダ公!」だの差別意識丸出しの言葉が飛び交う。

ローラは、「彼、黒すぎるわ」とジャマールについて苦笑いし、
ジャマールは、彼に恋するかわいい白人の女友達に
「きみたちは、ぼくには白すぎるのかもしれない」と言う。
敬虔なユダヤ教徒の家庭で育ったフィリップの祖父母は、“黒人でも構わないから”ガールフレンドを紹介してと言い、
ローラがユダヤ教徒でないことには素直に残念がる。

人種、宗教、生活階層。様々な違いとそこにある差別意識。
彼らはそれらをまるでないもののように無視する訳でもなく、かといって特別に過剰に扱う訳でもない。
ただ、たおやかにおおらかにそれらを飛び越え、彼らは歩いていく。

もちろん、人種や宗教に関わる問題は、決して簡単な問題ではないだろうし、
フランスの経済・政治状況についてもわたしはよく分からないが、
例えば、フィリップが低い生活階層で生きているのも、
民族的な差別の問題が何か関係しているのかもしれない。
そして、悲しい過去の歴史やそこから続いてきた人種問題や差別問題が抱える現実は、
日本、フランスどこの国でも計り知れないほど重く厳しいもので、
無知なわたしが安易に発言できるようなことではないのだろう。
でも、現在あるひとつのスタンスとして彼ら3人の姿はわたしにとって参考になったことは確かだ。
ある意味では、羨ましいとさえ思った。

感想が少し重くなってしまったかもしれないが、
この映画自体はいたって軽やかでほほえましい作品である。
みんなに大人気!という作品ではきっとないのだろうけど、
個人的には好きな映画がまた一つ増えた。うれしい限りだ。

text by...  RS

2000/11/30

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